2012/02/27

■コンクール体験記 宮崎貴子


 先日2月8日〜14日、オーストリアのグラーツで開催された第8回フランツ・シューベルトと現代音楽国際コンクールのリートデュオ部門に、バリトン歌手と共に参加しました。
 グラーツ芸大を会場に開催される3年に1度のコンクールで、他に室内楽部門もあり、その名の通りプログラムは全てシューベルトの作品とコンクールから与えられたリストに載っている現代音楽(初期のシェーンベルクやプーランク等から、本当のコンテンポラリーまで多彩)のみ。それらを組み合わせて、1次予選15分、2次予選、ファイナルと各20分程度のプログラムを作ります。
 1次では難解な課題曲もあり、 音を覚えないと弾けないような現代曲も多かったため、準備で一番大変だったのは譜読みだったかもしれません。新しいレパートリーも多く、楽譜の入手に手間取った曲もありました。                                                                                  

そして実は準備以外にも関門があり、年が明けていよいよこれから最後の詰めという時期になって歌手の喉の具合が悪くなってしまい、2週間以上ドクターストップがかかってしまったのです。とにかく休養に専念すれば大丈夫だろうと初めは楽観的に構えていたものの、2週間が経とうとする頃になっても大きな快復は見られず、具合の報告をくれるメールの文面の雲行きも怪しくなっていき…コンクール参加をキャンセルすることになっても仕方がないということを頭の片隅で覚悟しつつ、どんなに直前に復帰してくれても大丈夫なように自分のモチベーションを更に上げて練習する日々でした。
 幸い出発の1週間前になって復帰してくれました。調子もよく、まだ合わせもしていなかった新曲数曲もなんとか形になって、無事グラーツに向けて発つことができました。そんな調子だったので私はとにかく、グラーツの街に辿り着けただけで感謝!という心境でした。

 3日間に渡って行われていた1次予選の最終日が、私たちの出番でした。90組ほどの応募と聞いていましたが棄権が多く、実際参加したのは55組。
ピアノは、スタインウェイとファツィオリの2台のフルコンが用意されており、それぞれ演奏の前日に10分間のホールリハーサルをかねて試弾もし、決定するというシステムでした。
 スタインウェイはお馴染みのブリリアントな響き。ファツィオリは普段ほとんど弾く機会がないのですが、少し鍵盤が重くとてもまろやかな響きで、弾き込めばリッチな音色が出せるんだろうなぁ…という印象を個人的には持っています。今回私たちは、お互い迷うことなく日頃耳に馴染んだスタインウェイを選んだのですが、なんと他の参加者たちは9割近くがファツィオリを選んでいました。                                                                                  

 1次のプログラムは、課題曲、シューベルト「別れ」、ライマン「夜曲」より2曲の抜粋で、スタインウェイの響きも現代曲と合い、苦労したシューベルトもなんとかなり、お客さんの反応も良く、なかなかいいラウンドでした。29組が2次へ進み、私たちも自分の名前を見つけて一安心。                                                2次は、20分の間にツィクルスでもない短い曲が9曲でさらに言語も3カ国語というプログラムになってしまったので、一番まとめにくいラウンドでした。
ジョン・ケージに始まり、シェーンベルク、シューベルト「盲目の少年」「愛の使い」「さすらい人」、アイヴス、ウェーベルン、プーランク、ひとつひとつ違う味が出せるように、楽しんで演奏できるよう心がけました。2次以降は演奏がインターネットで配信されるということだったので、それも励みになりました。出来もまずまずで、幸い12組のファイナリストの中に残ることができました。                                                                                          

 ピアノ選びの時点では迷いはなかったのですが、スタインウェイを選んだことでずっと気を遣い続けていたことがありました。いかに静かな柔らかい音を出すか。クリアな音色と弾きやすさ、ダイナミクスレンジの広さが気に入って選んだ楽器ではありましたが、やはりスタインウェイのフルコンですし、ピアノの屋根も全開、しかもなかなか使い込まれた様子の楽器だったので、よく鳴ってしまうのです。                                                                          そもそもシューベルトの歌曲なんて、本当は今のようなピアノで演奏することは想定されていないはず。当時のピアノ(フォルテピアノ)は現代のピアノに比べて作りが華奢です。ハンマーにはフェルトの代わりに皮が巻かれ、音域もせいぜい6オクターヴ半までです。また弦の張り方も今と違うので、ボリュームはない分それぞれの音が混じり合わず、響きが透明です。ですから歌曲に限らずシューベルトの曲は、あんなに和音の連打やアルベジオが多いのだと思います。そんなピアノを想定して作曲されたであろう歌曲を現代のスタインウェイで弾くのですから、ソロを弾くときとは随分違うタッチが必要です。しかも今回周りの参加者たちはほとんどが音色の柔らかいファツィオリを選んでおり、その土俵で審査されるので、ラウンドが進むにつれてピアニッシモ・香るような柔らかい音色への意識が強くなっていきました。                            

ファイナルでは演奏順が入れ替わり、これまで夜だった出番が急に午前中になりました。プログラムはシューベルト「ドッペルゲンガー」「逢瀬と別れ」、エガート、ブゾーニ「5つのゲーテの詩による歌」より2曲、ザイター(プリペイドピアノ使用)。このラウンドには私たちそれぞれが特に気に入っている曲も入っていましたので、とにかく最後まで演奏できたことが幸せでした。楽器のコントロールに関しては一番神経質になったラウンドではありましたが、それも楽しむことができました。                       

 残念ながら入賞はなりませんでしたが、全てのプログラムを演奏でき、審査員の先生からも様々な助言や感想を頂くことができました。リートを弾く時の楽器の選び方やここから先の取り組み方など考えさせられることも沢山あり、本当に貴重な経験でした。                                                      

(宮崎貴子/ドイツ・ハノーファー音楽大学フォルテピアノ修士課程在籍)


2012/02/13

■奥谷寛子ピアノ教室『クリスマスコンサート』


昨年12月25日(日)、千葉県白井市文化会館にて生徒達の発表会「クリスマスコンサート」を開催しました。リスト生誕200周年でしたので、ピアノ演奏のほかに小学生による『リストの生涯』について朗読を行いました。
教室では、年1回ホールでの発表会の他に、年に2回おさらい会を開き、ソロの演奏、連弾、オペラDVD鑑賞をしています。オペラ鑑賞は私自身、ウィーン国立歌劇場で超一流の演奏を聴いてからというもの、すっかり魅了されてしまい、「この素晴らしさ、楽しさを是非、生徒達にも知ってもらいたい!」と思い、年に2作品を皆で観ています。字幕がついても内容が難しいので私が解説をします。それでも、幼稚園児などには意味が完全には分からないとは思います。でも、小さな子供というのは、本能的に「凄いもの」という事が分かるのでしょうか?3歳や4歳の子が飽きもせず、食い入るように画面を見つめているので、その真剣な様子には毎回心を打たれてしまいます。        

通常のレッスンについてですが、私がいつも大変心を砕いている問題について、野村先生の著書「音楽的なピアノ演奏のヒント」にこう記してありました。
「音楽史、対位法、和声学、実技などで習った知識がばらばらなのである。それらを一度どこかでまとめる作業が必要なのだと思う。」
私も「日本の音楽教育で遅れている事のひとつは、この問題なのではないか?」「たとえ趣味でピアノを習っている子供達でも、楽典などのソルフェージュ、音楽史、和声学などの知識が演奏に集約されるような教育を受けるべきだ。」と思います。オペラ鑑賞も、その一環です。オーケストラや、歌手たちの様々な楽器の音、声に触れるうちにピアノ演奏においての音色に対するセンスのようなものが育つのではないかと思います。ですから、レッスンでは、ピアノ、ソルフェージュの他にオーケストラスコアを見ながらベートーヴェンの交響曲第6番田園を聴いて「冒頭のヴィオラとチェロがつくっている完全五度という音程が田園風の感じを出しているね。」と話したり、一緒に地球儀を見ながら「ドボルザークはどうしてアメリカで寂しくなってしまったかというと、故郷のチェコとはこんなに離れているからなんだね。」などと話をしながら、交響曲第九番「新世界」の二楽章を聴いたりします。
今回、出版された野村先生の著書「音楽的なピアノ演奏のヒント」には、私がずっと読みたいと思っていた「ミツキエヴィチの詩」など、貴重な資料が数多く載っていて、本当に嬉しいです。そして、メロス音楽セミナーで学ぶことが出来た経験は私にとってかけがえのない財産です。
野村先生の著書、メロスで学んだことが私を通して生徒達に伝わり、音楽好きな子に育ってくれたらこんなに嬉しいことはありません。
教え始めた当初はほんの数人だった生徒数も、現在は在籍者数が45人にまで増えました。毎日身が引き締まる思いですが、私自身、しっかり勉強して良いレッスンができるようにこれからも努力して行きたいと思います。(奥谷寛子)


2012/02/13

■『新しいコーナー誕生!』 野村三郎


<ピアノ講師の皆様へ>    
「音の交差点」に多くのコンクール入賞者、リサイタル等華やかなニュースが掲載されています。そこで皆様の中にはそういうニュースのみが「音の交差点」の趣旨だ、と誤解されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。                                                             私たちのメロス講習会も同じ趣旨なのですが、これも優秀な学生の皆さんのみが対象の講習会だという誤解があるようです。「山は高きが故に尊からず」という言葉があります。頂点を目指すのも素晴らしいことですが、裾野を広げることも同様に重要な営みです。                                  私たちが目指すものは真剣に音楽を学び、同時にその文化的背景にまで視野を広げる音楽愛好家、音楽家を育てるのが目的です。「山は高きが故に尊からず」という言葉を引いたのは広い裾野があって高い山は存在するということと、富士山の美しさはその偏りのない広大な裾野があってこそ均整の取れた尊い山が形成されているということです。それは音楽だけに目が向いている視野の狭さでは築けない芸術の姿に共通するものです。
 そういう次第で地道に後輩を育てていらっしゃる方々にもメロス講習会に参加いただきたいし、『音の交差点』にもそういう活動を紹介したいと願っています。どうかこの趣旨をご理解頂き、後進の教育の有様、発表会などのニュースもお寄せください。そしてそういう地道な努力をしている方々のための講習会を秋に開く予定です。講習会、『音の交差点』に多くの方々の参加を期待しております。


2012/02/13

浅野未麗 帰国記念ピアノリサイタル


3月24日(土)15:00京都青山音楽記念館バロックザール
シューベルトは初挑戦です。すっきりしたプログラムにしてみました。2月は、毎日もくもくとプログラムの弾き込みに徹して、ゆっくり春が来るのを感じながら喜んで当日を迎えられたら・・・と願っています。素晴らしいムジークフェラインでのオーケストラの音に思いを馳せながら日々精進してまいります。皆様と会場でお会いできますことを楽しみにしております。(浅野未麗)


2012/02/13

山口友由実ピアノリサイタル


2月2日(木)19:00 クロスターノイブルク修道院(オーストリア・クロスターノイブルク市)
2014年のクロスターノイブルク修道院900年祭に向けて、今年からスタートした新しいコンサートシリーズのオープニングを山口友由実さん(2011年度ブラームス国際コンクール入賞)が飾ります。                                                        <プログラム>HAYDN:Sonate für Klavier Hob.XVI/48    TAKEMITSU: Rain Tree Sketch In Memoriam Olivier Messiaen  BRAHMS: Klavierstücke Op.118                                                                         後援:クロスターノイブルク市、日本大使館広報文化センター

<ご報告>                                                                              ■1月15日 ペーター教会
昨年の9月に引き続き、ペーター教会にてモーツァルトソナタ全曲演奏会に出演させて頂きました。モーツァルトの故郷オーストリアで、また教会で演奏させていただけることは大きな喜びで、当日も気持ち良く響く音を聴きながら、お客様と音楽を楽しむことが出来ました。
■2月2日 クロスターノイブルク修道院
2月にはウィーン近郊クロスターノイブルクにて初のリサイタルをさせていただくことが出来ました。このリサイタルは2014年のクロスターノイブルク設立900年祭に向けたコンサートシリーズのオープニングを飾るもので、それゆえ大きな責任もありましたが、当日はたくさんのお客様にいらしていただき、無事に終了することが出来ました。リサイタル開催に関わってくださった皆様に感謝すると共に、これからも成長していけるよう、がんばっていきたいと思っております。                                            (山口友由実)


logo
deco
sakai.at