2014/04/16

■メロス音楽セミナー2014報告~⑩           修了演奏会  


●修了演奏会 3月29日(土)11:00       ウィーン楽友協会内ベーゼンドルファー・シュタットサロンにて

アヴォ先生、クロフィッチ先生、そして大勢の応援の方々を前に、緊張した雰囲気で始まった修了演奏会。オーストリアを代表する名器ベーゼンドルファーで奏でる受講生の皆さんの音楽は、音楽と共にあったウィーンでの10日間の最後を飾る素晴らしいものとなりました。演奏終了後、先生方から、サイン入りの修了証をそれぞれ授与された皆さんのお顔は最高に輝いていました。

♪今回初めて参加させて頂きました。申し込みをしたのは、去年11月。迷った末のことでしたので内心自分の中で心配と不安もありましたが、最後の修了コンサートを無事終えた時の喜びは、ほんとうに音楽を勉強してきて良かった!!と深く思いました。(黒川さん ピアノ講師)

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2014/04/11

■魅了された響きの空間 ~⑨


楽友協会大ホールは、窓から陽の光が入る時間に行くと、まるで教会の中にいるように感じられます。そのような素敵な雰囲気の中で聴いたウィーン・フィルのプロ―ベでは、サン=サーンスの「オルガン付き」でオルガンとオーケストラの音色が溶け合った瞬間、気持ちのコントロールができなくなってしまいました。ウィーンでしか体験できないこの響きの世界に身を置くことができ、本当に幸せでした。     (田辺さん ピアノ講師)

なんと言ってもまずオペラ座や楽友協会などのホールの建物が美しかったことです。そしてオーケストラや弦楽四重奏団の楽器の響かせ方や空間の使い方が絶妙でした。テレビでしか聴くことのできなかったウィーン・フィルの音を、オペラでも、定期演奏会のための公開リハーサルでも聴くことができてとても興奮しました。弦楽器の音がシルクのように滑らかで、始終魅了されていました。(高橋さん 音大生)

今回、5日連続でコンサートに行きましたが、特に深く印象に残っているのは国立歌劇場での「ラ・ボエーム」です。ボエームは、2005年にメロスに参加した際も観ましたが、2回ともボックス席の最前列をご用意下さったおかげで、オケピットも舞台もほんとうに間近の素晴らしいお席で音楽を全身全霊で満喫しました。
そしてもうひとつ、フォルクスオーパーでのバレエ「カルミナ・ブラーナ」が予想をこえる面白さで、新鮮な驚きを覚えながら目を丸くして舞台を見つめてしまいました。客席も大盛り上がりでした。
今でも、目を閉じるとあの美しい舞台や、躍動するダンサー、音楽の響きがまざまざと甦って来ます。とても幸福な時間でした。(奥谷さん ピアノ講師)

生まれて初めてのオペラ鑑賞が、ウィーン国立歌劇場で、しかも指揮者、オケピットの中、出演者の表情、プロンプターの手(!)も見える特等席で見ることができ、終始興奮していました。オケの迫力と演者が一体となり生み出す舞台は、なんとも言えないほど素敵なものでした。本当に贅沢なひとときを味わえました。(荒木さん 音大大学院生)

ウィーン・フィルを聴くことができ、ただただ感激しました。オペラでは、指揮者も歌手も近いボックス席で演奏者の息使いまで聴こえてくる特別な時間となりました。(比果さん ピアノ講師)

メロスに参加する上で、レッスンの次に重要なのはコンサートです。希望すればチケットが手に入るなんて、こんなに幸せなことはありません。昼間のレッスン、練習の疲れも吹き飛ぶ楽しみな時間です。特にオペラをこんなに身近に感じられるようになったのは、メロスのお陰です。便利な場所にホテルを決めて下さったことも、私達の行動をスムーズにしてくれている要因です。
以下、今回印象の残った舞台です。

●トゥーランドット
2008年に1度観た作品ですが、とても楽しかったのでまた行って来ました。
最初にフォルクスオーパーに足を踏み入れた時は、正直な所、劇場も観客もちょっとがっかりで庶民的と言うか田舎っぽい感じがどうなのかと思いましたが、そこはさすがウィーン。オケも歌手も素晴らしくて、何度でも観たいと思っています。今回は特にリューの役に感動しました。虫のコスチュームの演出も、相変わらず面白くて大好きです。
●ラ・ボエーム
ウィーン国立歌劇場でオペラを観ると言うことは、ただ作品を鑑賞するだけでない楽しみがあります。ちょっとおしゃれをしてあの壮麗な建物に入り、赤い絨毯を踏みしめ、天井の豪華絢爛な絵に見とれ、自分が何か間違ったことをしていないかと緊張しながら席に着き、素晴らしい作品に酔いしれる。何と言ってもオケはウィーンフィルですしね。このドキドキした感じは他では経験出来ません。今回は姿も声もとても美しいミミでしたから、思わず涙が出そうになるくらい感動しました。
●ウィーン・フィル定期演奏会
他の方がプローベをご覧になったその本番を、幸運にも聴かせて頂くことが出来ました。
毎年ニューイヤーコンサートの様子を見る度に、自分がそこでコンサートを聴いた経験があると言うだけでどれだけ誇らしいことかと思います。あのホールそのものがウィーン・フィルの音の一部分なのですね。
ブラームス、シェーンベルク、そしてサン=サーンスのオルガン付の交響曲。大好きな作品なのですが、映画「ベイブ」と言う子豚の出て来る作品の中に使われている曲なので、壮大なオルガンの響きを楽しみながら、頭の中には子豚の大活躍のシーンが浮かんでいました。   (田中さん ピアノ講師)


2014/04/10

■『音楽の都』を楽しんだ夜 ~⑧


セミナー期間中に、皆さんがそれぞれ出かけたオペラや演奏会の演目をみると、『音楽の都』をまるごと楽しまれた感動が伝わってくるようです。

●ウィーン国立歌劇場
3月26日/29日 ラ・ボエーム(プッチーニ)
3月28日 バレエ 白鳥の湖(チャイコフスキー)

●フォルクスオーパー
3月23日 トゥーランドット(プッチーニ)
3月26日 バレエ 牧神の午後/ボレロ/カルミナブラーナ
3月27日 こうもり(J・シュトラウス)
3月28日 魔笛(モーツァルト)
3月30日 伯爵夫人マリッツァ(カールマン)

●楽友協会
3月23日 ウィーン交響楽団
3月25日 キュッヒルク ワルテット
3月26日 アンスネス ピアノリサイタル
3月27日午後 ウィーン・フィル公開リハーサル(指揮:ズービン・メータ)
3月27日 アルティスクワルテット

●コンツェルトハウス
3月24日 ザ・フィルハモニック
3月29日 ポゴレリッチ ピアノリサイタル


2014/04/10

■練習、レッスン、練習の日々・・・  ~⑦


練習、レッスン、練習、と音楽合宿のような毎日でしたが、短期間に集中して学ぼうという皆さんの真剣な姿に応えるように、先生方もパワー溢れる素晴らしいレッスンをして下さいました。皆さんが十分に準備してレッスンに臨まれた結果、たくさんの収穫があったことと思います。

先生方の意図す ることを瞬時に、正確に分かり易く受講生にお伝えする通訳の役割は、とても重要です。クロフィッチ・クラスをお引き受け下さいました岩田朋子さん、アヴォ・クラスの山本彩子さん、マイッスルクラスの通訳及び伴奏ピアニストを務めて下さいました潮田紀子さんにあらためて御礼申し上げます。 (メロス・野村)

アヴォ先生のレッスンでとても印象的だったことは、『和声の響きを大切にしていることと、休符の存在』でした。これまであまり意識していなかったことでしたが、その休符から曲の中のキャラクターや意図を読み取れるようなレッスンをして頂いたおかげで、楽譜を読む時の意識が変わりました。また、弾いている時は、言葉が通じずとも横で身振り手振りで熱心に指導して下さり、自分の思っている何倍も表現して弾くことの大切さを改めて感じることができました。(荒木さん 音大大学院生)

毎回のレッスンが刺激的で新しい発見が沢山ありました。帰国してからアヴォ先生がおっしゃっていたことでよく思い出して意識するのは、『転調していく時の和声の色の変化を感じること』や『自分の音をよく聴いて弾く』ということです。今でも先生が弾かれた美しいピアノの音色や自分で弾いて聴いた音が耳の中で鳴っています。あれらの響きはずっと忘れられません。(高橋さん 音大生)

アヴォ先生はハーモニーの移り変わり、音 をよく聴くことを重点に、練習の仕方なども丁寧に教えて下さいました。先生は演奏をして示して下さるので、とても 分かりやすく、耳にも残ります。奏でられた音楽を忘れずに、今後も練習をしていきたいと思います。(比果さん ピアノ講師)

受講生の皆さんは十分に準備されており、とても充実していたレッスンだったと思います。そして何よりも皆さんの音楽に対する真剣な眼差しと、Avo先生の熱い音楽に、私も通訳をしながらとても感動し、刺激的な講習会でした。

『調性を感じること、和声を感じること、休符を感じること、そして奏でるすべての音を自分の耳でよく聴くこと。』   Avo先生がレッスン中におっしゃっていたことは、受講していた曲だけではなく、今後演奏するすべての曲に通じることでした。これらを意識すると、必然的に譜読みの仕方や楽譜の見方が変わってくると思います。
受講生の皆さんは、レッスンを受けたことにより技術的な向上は勿論のこと、楽譜に託された作曲家の意図を見出す必要性、そして楽譜と向き合うことはどういうことか?ということを学ぶことが出来たのではないでしょうか。

ベーゼンドルファーの最高のピアノで、Avo先生と共に奏でた音色・音楽を日本で表現することは、ピアノも気候も建物も違うので大変難しいことだと思います。しかし、あの時の音色・音楽を常に感じながら、日本でもウィーンの響きを奏でて頂けたらと思います。
(アヴォクラス通訳、山本彩子さん。ウィーン国立音大室内鍵盤学科卒、アヴォ先生門下メロス生)

メロスには2007年以 降7回参加させて頂いていますが、今回はクロフィッチ先生のレッスンを受けさせて頂きました。
私はウィーンの先生はお医者様だと思っています。
今まで受けた他の先生もそうですが、どの先生も実に豊富な言葉の引出しを沢山持っていらして、どうしたらイメージを掴めるか実に的確な比喩や表現でアドバイスを下さいます。
名医の診断ですから、それぞれに合う処方箋の効き目は明らかです。
ウィーンに行く度に、自分一人では理解出来ずもやもやしていた部分が霧が晴れたようにすっきりし、深く知識を得る事で作品への愛着も深まりました。(田中さん ピアノ講師)

クロフィッチ 先生のレッスンは、曲の内容をどう理解して演奏すれば良いかを、具多的に、分かり易く教えて下さり、私の中で謎が解けたようなレッスン体験でした。又練習の方法もとても参考にな りました。3回のレッスンがほんとうに貴重な時間でした。これから 更に勉強したいという意欲が湧 いてまいりました。(黒川さん ピアノ講師)

マイッスル先生 のレッスンでは、日本で の先生とは違う、私自身の個性を変えるのではなく、伸ばすご指導をしてもらえて大変嬉しかったです。(澤井さん 音高生)

私は海外でレッスンを受けるのは初めてということもあり、練習してきたことや考えてきたことがきちんと弾いて見せられるようにしなければ、という思いでMozartのViolin concertoを弾きました。 しかしその思いがそのまま演奏に現れ、堅い演奏になってしまいました。そんな私をマイッスル先生は優しく弾きやすい状態にして下さり、楽譜上に書かれてある奥の世界を創造したり、自分が感じたことを表現することの大切さ、また細かい技術を教えて下さいました。
曲の最初から最後まで丁寧に教えて下さり、3回のレッスンが本当に貴重な時間となり、一生忘れられないレッスンでした!!(石渡さん 音校生)


2014/04/09

■毎日が音楽でいっぱいの日々でした。~⑥


ウィーン4区の目抜き通りにあるホテルパパゲーノから、毎朝歩いて練習会場のヨハン・クラヴィーアサロンへ。そして練習・レッスン会場にもなっている楽友協会内のベーゼンドルファー・シュタットサロンへ通うのが毎日の通学路。

カール教会の美しい鐘の音を聴きながら大きな広場を横切ると、左手にはブラームスの像があり、通りの向かい側にはピンク色に輝いた音楽の殿堂、楽友協会が見えて来る。右手を見ると、ウィーンを代表するもうひとつの名門ホール、コンツェルトハウス、その向かいの広場には、ベートーヴェン像がある。      楽譜と楽器を抱えて大急ぎで歩いていても、気持ちはどこかゆったりとした気分。今日のレッスンがうまくいきますように。


2014/04/09

~参加者の広場~  ビバ博士の講義 ~⑤


今回、ムジークフェラインのアルヒーフにて、ビバ博士のご講義を受けることが出来たのは大変貴重な体験でした。モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームスの自筆譜をこんなに間近で見る事が出来るなんて!自筆譜との距離がとても近かったので、集中してじっと楽譜を見ていると作曲家の魂が筆跡を通して伝わってくるような錯覚を覚え、深く感動しました。博士は、モーツァルトがどのような順番で楽譜を書いたかなど具体的に説明して下さり、モーツァルトがとてもプロフェッショナルに時間を使ったことや、ブラームスは他の作曲家の作曲スケッチを集めるのが好きだったけれども、自分のスケッチは人に見せたくなかったエピソードなど、ユーモアたっぷりにお話下さり、大変勉強になるとともに夢のようなひとときでした。(奥谷さん ピアノ講師)

学友協会内のアルヒーフに入れたことだけでも貴重な体験なのに、作曲家の自筆譜を間近で見ることができるなんて本当に夢のようでした。偉大な作曲家たちの自筆譜から、性格や生活の一部を読み取るお話を聞けて、作曲家達の人間的な一面を見れた気がしました。(荒木さん 音大大学院生)

一生出会うこともなかったかもしれない作曲家達の貴重な自筆譜を見る事ができて鳥肌が立ちました。作曲家の性格や思いが楽譜に表出されていて、以前よりも作曲家達との距離が縮まった気がします。(高橋さん 音大生)

偉大な作曲家たちが遺した自筆譜、それを目の前にするだけでも出版された楽譜には書かれていない、作曲家たちが作品に込めた想いにより近づけるような気がしていつもドキドキします。ビバ博士が貴重な自筆譜から読み取れることをお話しく下さると、五線譜に向かう作曲家たちの姿が目に浮かぶようで、さらなる感動がありました。また、音楽への深い愛情をもちながら冷静な分析をされる博士のお姿もとても印象的でした。(田辺さん ピアノ講師)

まさか、モーツァルトやベートーヴェンなどの自筆譜を見せて頂けると思いませんでした。自筆譜にはそれぞれの個性が滲み出ていて、すべてが違いました。そこで、私は「別に皆と同じように(演奏を)しなくても良いんだな」と感じました。(澤井さん 音高生)

今回は、これまでメロスが開催された中で、2回目となる作曲家直筆の楽譜を見せて頂ける機会を得られたことは、本当に幸運だったと思います。一般の人は立ち入れないアルヒーフで、大作曲家の直筆の楽譜を身近に見ることができた喜びは、その時代にタイムスリップしたような感動がありました。作曲家一人ひとりの曲への想いが、ビバ先生の心から音楽を愛し研究されていらっしゃる想いと重なり、強く心に残りました。(黒川さん ピアノ講師)

説明を聞きながら自筆譜を見ることにより、当時の作曲者の性格や背景が想像できて、今後いろいろな曲を勉強するのに良いヒントを頂いた気になりました。(石渡さん 音高生)

貴重な自筆譜を目の当たりにし、そこから作曲者の性格や時代背景をお話し頂いたことは、とても有意義な時間となり、偉大な作曲家が身近に感じることができました。(比果さん ピアノ講師)


2014/04/08

■一生忘れ得ぬウィーンでの体験 ~④                   岩田朋子


3月24日午後、楽友協会アルヒーフで行われましたビバ博士の講義で、通訳をお願いしましたピアニストの岩田朋子さんより感想をいただきましたのでご紹介します。

大作曲家の自筆譜を見るということは、それだけで感動的なものでした。けれどもビバ先生はその感動だけで終わらせる事なく、自筆譜そのもの、スケッチ、あるいは訂正の書き込み、斜線による削除の跡、紙の質、インクの色ほか、あらゆるものをもとに推理、想像、研究する事により導き出された、それぞれの作曲家の性格や曲を作るプロセスの特徴や違いを、大変分かりやすくお話下さいました。

講義の通訳というのは、レッスンの通訳とはまた違い、特にビバ先生の講義では事前の打ち合わせなどがないので、毎回何が飛び出すか、私にとっては緊張を伴うとてもスリリングな体験です。でもビバ先生はいつも美しく文学的、それでいてウィーン人らしいユーモアに溢れる言葉を選んで、イキイキとお話されるので、どんどんその世界に引き込まれていきます。

できるだけ先生の使っていらっしゃる言葉や表現に一番近い日本語に瞬時に置き換えて、先生のリズムを壊さぬように、そして独特の温かいユーモアなども皆さんにお伝えできるようにと心がけています。

まさに人類の宝といえる自筆譜を、より良く見えるようにと、触れそうなほど近くまで私たちを呼び寄せて見せて下さいました。この夢のような素晴らしい時間は私たち一同の一生忘れ得ぬウィーンのお土産となりました。


2014/04/06

■オットー・ビバ博士特別講義 ~③                         野村三郎


毎年、楽友協会アルヒーフ室長のオットー・ビバ博士のお話は示唆に富んでおり、とても勉強になる。今年メロス講習会直前に博士とテーマを相談する中で出てきたのが、大作曲家の自筆譜を見ながらのお話という提案であった。

他の予定を変更しても是非とも実現したい内容である。即座に私はこの提案に乗ることに決めた。楽友協会資料室に15人までというお話だったが、皆参加したいこの講義である。20人以上になったが皆でお話を伺うことになった。

ひとつの箱の中に準備されたモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームスの自筆譜を、ビバ博士は白い手袋で宝物をそっと扱うように、丁寧に出されて話が始まった。

モーツァルトの自筆譜は書き直しなどないきれいな浄書のようである。それは彼が頭の中で作品を完成させてから、それを五線紙の上に移して行ったからだという。天才モーツァルトの頭脳はそんなに緻密に出来ていたのだ。

ベートーヴェンの楽譜は彼が悪戦苦闘した跡が著しく、書き直した筆跡が、その苦心の様を見せてくれる。ベートーヴェンはポケットに二つ折りにしたメモ帳を忍ばせ、浮かんできた旋律をすぐさまメモしたという。それらが後で作品として五線紙の上で完成されていったのだ。それでも彼はそれを何度も推敲したのである。

シューベルトの楽譜には不思議なことに、メロディーだけが書かれ、他のパートが抜けているものがある。彼はまず浮かんだメロディーを逃すまいとそれを書きつけ、和音や他の楽器の部分は後から埋めて行ったのだ。如何にも600曲以上の歌曲を作曲した音楽家に相応しい。

シューマンも何度も書き直した。彼は出版するばかりになった印刷譜にまで修正を加えずにはおかなかったという。勿論彼の場合も自筆譜に修正のあとが残されている。

ブラームスはこうした先人たちの書きつけの断片を集めていたという。彼の自筆譜はモーツァルトのようにきれいである。しかし、それは彼が自分の書き直したものを破棄したからで、そうした浄書だけを彼は後世に残したかったのだ。ところがビバ博士の前任者はそれらを保存していた。

こういう講義を聞いていると作曲家もそれぞれの流儀で作品完成に心血を注いでいたことが分かる。それは漫然と自筆譜を眺めていたのでは分からない。ビバ博士の解説があってこその貴重な滅多にない勉強を我々はさせてもらったのである。

■  Prof.Dr.Otto Biba  (楽友協会・アルヒーフ所長)
ウィーン大学で音楽学を学ぶ。ウィーン大学、ウィーン国立音楽大学で教鞭を執る。モーツァルト中央研究所
、ハイドン研究所、国際シューベルト協会、ブラームス全集委員会など様々な国際学会理事及び顧問を務める。多数の出版物があるが、特に17~20世紀の様々な作曲家の120を越えるエディションに関わっている。ヨーロッパ、アメリカ、日本で定期的に講演。学問的展覧会のプランニング及び指導など世界的に活躍している。2006年オーストリア政府より「オーストリア学術・文化名誉十字勲章」、日本政府より「旭日小綬賞」が授与された。

参加者に好評のシリーズとなっているメロス特別講義は、05年「オーストリアの音楽的伝統について」、06年「モーツァルトの一日」、07年「カール・チェルニー」、10年「ウィーンのシューマンとショパン」、12年「ムジークフェライン創立200年記念ー音楽教育とピアノ」をテーマに行われた。


2014/04/05

■ハイリゲンシュタットの桜 


明るく穏やかな春の風景が広がるハイリゲンシュタット。ベートーヴェンへの想いを巡らせながら歩いた音楽散歩の一日でした。

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2014/04/03

■魅力的な3人の講師陣とともに ~②                            野村 三郎


今年のメロス講習会が終わった。ここには2つの感慨がある。
ひとつはメロス講習会がこれで終わりになるかもしれない、ということと、今年の講習会が今までやってきた講習会の最上の出来のひとつだったということである。

今年の成果の原因は講師の顔ぶれに負うところ大である。
柱であるアヴォ先生の力量を疑うものは誰もいない。アヴォ先生の存在感は厳しいレッスンでも、修了演奏会後のお別れ会での周囲を和ませるたくまざるユーモアでも、参加者全員を温かく包むものだ。そういう教育者、人間としてもアヴォ先生の存在あってのメロス講習会なのである。

昨年から復活したヴァイオリンのマイッスル先生の、先生・人間としての素晴らしさは、私たちとかなり長い期間一緒に仕事を共にしてきて、変わらないものである。彼は一昔以前からすると比較にならないほど忙しくなった。それは彼の社会的評価の高まりが、彼を演奏家、教育者、オルガナイザーとして国際的に高い位置に押し上げたからである。
それでもマイッスル先生は以前とまったく変わらない。全力でレッスンにあたり、親しみやすく、生徒に思いやり深い。

初めて来ていただいたクロフィッチ先生は、まさにメロスの理念にピッタリの方だった。演奏家としてソロ、ジェス・トリオでの活躍、教育者としてウィーン・コンセルヴァトワール・ソロ科主任教授として多忙を極める先生は、極めて親しみやすい人柄と、曲に対する豊富な知識と深い洞察力の持主である。しかもアヴォ、マイッスル両先生との人間的親和性がまさにメロス講習会の求めているものであった。

かくして参加者の熱意と努力と相俟って、今年のこの講習会の素晴らしい成果を生み出したように思う。期間的には例年よりやや短い、その分凝縮した11日間だったが、私は今回関わってくださった皆さんに深い感謝の気持ちをもって、この日々を振り返っているところである。

写真:修了演奏会後の受講生とのお別れランチで                             左より  ヨハネス・クロフィッチ先生(ピアノ・ ウィーンコンサルヴァトワール教授)、アヴォ・クユムジャン先生(ピアノ・ ウィーン国立音大教授)ヨハネス・マイッスル先生(ヴァイオリン・ ウィーン国立音大教授)


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