2010/12/24

冬のオペラ三昧


ハルテロス(アルチーナ)とカサロヴァ(ルッジェッロ) Credits: Wiener Staatsoper / Michael Pöhn

 99,8パーセント!ウィーン国立歌劇場の総監督にドミニク・メイエが就任して100日経った。その間の入場券の売り上げのパーセンテージがこの驚くべき数字である。これは連日ほぼ満席ということを意味している。

 最初のプレミエはヒンデミットの《カルディアック》であった。一般に最初は大事をとって有名な作品から始めるものだが、メイエは大胆にもそれほどポピュラーでないこの作品で勝負に出た。金細工師が自分の作品を手放したくなく、殺人を犯すこのオペラは音楽、ストーリーともなじみにくい感じがするが、94年に上演されたときに比べて遥かに楽しめた。歪んだ心理を反映した演出も、指揮の音楽総監督ウェルザー=メストの意気込みも十分というところ。

 更にメイエが就任前から宣言していたバロックオペラも大成功であった。作品はヘンデルの《アルチーナ》。魔女が自分の島に来る人間を動物や木や石に変えてしまうという物語だ。魔女にアーニャ・ハルテロス、恋人の騎士ルッジェーロにヴェッセリーナ・カサローヴァ、ルッジェーロを取り戻しに来る婚約者ブラダマンテにクリスティーナ・ハンマーシュトレームを配し最高の布陣。4時間の長丁場があっという間に過ぎた。設定が良い。ロンドンの貴族の邸宅で貴族たちが夫々の役を演ずる劇中劇仕立。豪華なロビーの奥が開くと草原になり、華やかな雰囲気のうちにバロック時代はかくもあったであろうと思わせた。

 それ以上に特筆すべきは指揮のマルク・ミンコフスキと彼の率いるルーブル宮音楽隊である。バロックオペラはかつてカラヤンとベームが手がけているが、ウィーン・フィルハーモニーに代わり、バロック音楽専門のオーケストラ登場という本物志向が生きていたのだ。

 加えるにパリのバレエのエトワールだったルグリがバレエ監督に就任し、これまで薄手だったバレエも充実し始めている。人気上々のメイエ時代は更に発展の気配だ。

 一方沈滞していたフォルクスオーパーの監督にロベルト・マイヤーが監督に就任して、ここ数年俄然活気が出てきた。監督自ら出演のミュージカル《ハロー・ドーリー》は2日も延長という人気ぶり。ドヴォルジャークのオペラ《ルサルカ》は童話めいた設定に自然破壊への警告も取り入れ、これも良かった。

圧倒的な存在感のドミンゴ Theater an der Wien credits: Robert Millard

 アン・デア・ウィーン劇場はドミンゴを主役にノーベル賞受賞の詩人ネルーダと郵便局員マリオの交流をテーマとしたダニエル・カカンのオペラ《郵便局員》を上演。切符は完売の盛況だ。これはマリオがネルーダによって目覚め、チリの軍事政権の弾圧下で自由を求め、犠牲になる物語だ。アントニオ・スカルメータの原作に基づいて映画化され、オスカー賞にノミネートされた原作のオペラ化である。マリオの書いたネルーダへの記録に感動する詩人を演ずるドミンゴは「さすが千両役者!」と言いたい位幕切れは見事であった。

 各オペラ劇場のこのような競い合いはウィーンのオペラ界にかつてない活況をもたらしている。


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