2011/07/03

ウィーン国立歌劇場 過去最高の成果


ウィーン国立歌劇場 

ウィーン国立歌劇場
 10/11シーズンが終わってウィーン国立歌劇場からこのシーズンの成果が発表された。それによると『1999年以来で最大限の成果を挙げ、切符の売り上げは98,33パーセント(前年97,93パーセント)で、29,53百万ユーロ(前年29,16百万ユーロ)に達した。観客は584,974人で、オペラ、バレエ、子供のためのオペラの331公演が行われ、オペラのみでは99,7パーセントという最大限の成果を挙げた。』という。

 今年の全てのレパートリーにふれるわけには行かないが、プレミエについて言えば《カルディアック》(ヒンデミット作曲、指揮ヴェルザー=メスト、演出スヴェン=エリック・ベヒトルフ)は前回94年の上演より遥かに明快で、題名役のウーシタロの名演が光っていた。今シーズンの話題をさらったのはヘンデルの《アルチーナ》(指揮マルコ・ミンコフスキ、演出アドリアン・ノブル、オーケストラ:ルーブル宮音楽隊)でアルチーナはアニア・ハルテロスで、ルジェーロ役のヴェッセリーナ・カサロヴァと共に素晴らしい歌唱を披露し、貴族の館での楽しみという形を取ったアンソニー・ワールドの舞台装置はかつてはかくもあったろうか、と思わせ大成功した。《アンナ・ボレーナ》はボレーナにネトレプコ、ジョヴァンナ・セイモール(英:シーモア)のガランチャという当代切っての人気歌手を揃えての上演は見事に当った。ネトレプコが年齢的に娘役を脱し、成熟した女性として尚且つコロラトゥーラをこなすという新境地を見せたのも収穫であった。

 ドミニク・メイエ総監督、ヴェルザー=メスト音楽総監督の一致した意見で20世紀のオペラに取り組むという方針は既にレパートリに入っている《イェヌーファ》と新演出の《カーチャ・カバノヴァー》(指揮ヴェルザー=メスト、演出アンドレ・エンゲル)に加え、来シーズンは《死の家》と続く。この一連のヤナーチェク作品で彼らのイデーが示されることとなる。《カーチャ・カバノヴァー》は主役のエミリー・メギーが弱かったのは惜しまれるが、冷酷な母親カバニハを宮廷歌手デボラ・ポラスキの名演で印象付けた。《ルクレチア・ボルジア》は演奏会形式ながらグルベローヴァが圧倒的歌唱で、共演者たちも負けじと頑張ってスリリングな一夜であった。

 大変興味深かった事件がある。モーツァルトのダ・ポンテ3部作を演出ジャン・=ルイス・マルティノーティで《ドン・ジョヴァンニ》、《フィガロの結婚》を上演したところ、これが陳腐でヴェルザー=メストがメイエ総監督に反対し、《コジ・ファン・トゥッテ》を94年以来のカロージ演出を残すことにしたのだ。これは名舞台で、ポネル演出の《フィガロの結婚》も残すべきであろうと思われる。メイエ総監督にとってはフランスでうまくいったからという思いがあったからのようだが、ラテン系とゲルマン系では感受性が違う。こうした運営責任者の意見の対立めいたものが、この体制ではうまく調整されるようで好ましい。しかし、同じくフランス流の切符発売日を上演の1月前から2月前に変えたのは地元のオペラファンには不評で、これは早く是正して欲しい点である。

 個人的感慨としては、パリでメイエ監督の兄貴分だったという指揮者チョン・ミュン・フンがヴェルディの《シモン・ボッカネグラ》を成功させたのは喜ぶべき出来事だった。彼のインタヴューをしぶしぶ引き受けたものの会ってみたらチョンなる人物が如何に人間的人物か分かり、すっかり意気投合した。彼は「心はいつも貧しい農民のようにありたいのです。未来を良くするよう望みの高いスピリッツを持たねばいけません。・・・活動の場を韓国、アジアに移したのは私の選択であり、それは責任でもある。」と語った。心に深く残る言葉である。(音楽の友7月号参照)

フォルクスオーパー

フォルクスオーパー
 さてフォルクスオーパーだが、新演出の《メリー・ウイドー》で成功し、これでしばらくぶりに2枚看板の《こうもり》と並べられるようになった。《メリー・ウイドー》100年というのでやった演出がまことにくだらなくて見に行く気がそがれていたのだ。今回はマルコ・アルトゥーロ・マレッリ演出で、舞台はアール・ヌーボー様式のしゃれたものとなった。一見の価値ありである。今フォルクスオーパーはオペレッタもミュージカルも面白い。お勧めする。

アン・デア・ウィーン劇場
 スタジオーネ・システムで夏もオペラを上演しているこの劇場は活気に満ちている。再演の《カルメル会修道女の対話》(プーランク作曲、指揮ベルトラン・ド・ビリ、演出エロバート・カーセン)はプティポン、ポラスキなど出演し、心にしみる舞台であった。フランス革命を背景に極限状態での修道女の決断は普遍的なものがある。この劇場のガイヤー監督は、その手腕を買われ2013年からパウントニーに代わってブレゲンツ音楽祭の監督になる事が決まった。ザルツブルク音楽祭の新監督ペレイラと並んでウィーン、オーストリア全体のオペラ界はますます活気を増すであろうと思われる。


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