2011/10/16

ウィーン交通事情


 ウィーンは住みやすいとよく人は言う。治安が良いとか、物価が安いとか、親切だとか、いろいろと理由を並べるが、こういうウィーンに対する評価は実は残念ながらEU加入以来難民の流入や通貨がユーロでヨーロッパ中統一されたことで、必ずしもその通りとは言い難くなった。残念なことである。だが住みやすさの中で1つだけ誇るべきことがある。それは交通機関の便利さと安さである。ウィーンは世田谷区くらいの広さだそうだが、その中を5本の地下鉄、網の目のような市電とバスが走っている。しかも安い。ただ安いのでなくて地下鉄、市電、バスは1枚の切符で乗り換え自由なのである。これはとてもありがたい。参考までに各都市の交通費との比較を掲げておこう。

都市名 1回券 1日券 1月券 年間券
ウィーン 1,80 5,70 49,50 449,00
ロンドン 4,60 9,20 122,00 1270,40
パリ 1,70 9,30 80,30 818,40
バルセロナ 1,45 6,20 51,00 -
ローマ 1,00 4,00 30,00 230,00
ベルリン 2,30 6,30 74,00 695,00
ミュンヘン 2,50 5,40 44,90 426,00
平均 2,20 6,60 64,50 648,00

(単位:ユーロ、1ユーロ=102円2012年10月現在)

 近く1回券、1日券は値上げをし、その分1月券、年間券は安くするという。ありがたいことだ。それほど広くない範囲なので停留所間の距離が短い。次の停留所がすぐ向こうに見える距離に停留所は置かれている。わが国のように歩行者が反対側へ行くために線路をまたいで歩道橋が置かれているところは殆どない。交通量の多い街の中心カールスプラッツの広場は地下に店があり、エスカレーターで降りたり、登ったり出来る。ここを我々は「金魚鉢」と呼んでいる。待ち合わせにも、乗換えにも便利だし、日曜も開いているパン屋がある。それにここ数年市電、バスの新型車が導入されて乳母車も簡単に乗れるし、年寄り、障碍者も乗り降りが随分と楽になった。あと何分で電車が来ますだの、新型は後どれほどで着きますだのの電気掲示板も普及し始めた。

 ウィーンの道は幅が広いがこれもこの10年くらいの間に車道を2車線から1車線にして歩道をゆったりした幅に広げたし、段差は完全にと言って良いほどなくなった。電車の混まない時間には自転車を車内に持ち込めるのも良い。街のあちこちに無料の貸し自転車が設置されているのも便利で、それに伴い歩道、自転車の道、車道が随分と整備されてきた。タクシーは公的交通機関並に扱われ、電車、バスの路線を走れる。これも良いアイディアである。こういう歩行者優先、弱者対策は社民党政権の下で進められてきたのだが、この前の選挙で緑の党が進出し、社民との連立政権になり一層歩行者優先が際立ってきている。ウィーン市内の車の速度制限が30キロという範囲が増え、一方通行を増やすという。

 ウィーンの列車、地下鉄、市電、バスには車掌はいないし、改札口もない。つまりただ乗りをしようと思えば、いつでもできる。しかし、時々検札がある。これで見つかると多額の罰金を取られる。あたりまえである。それにウィーンの地下鉄には他の都市の地下鉄のような暗い雰囲気がない。全ての交通機関の走行中の騒音が他の都市に比べて格段に静かである。東京の交通費の高さと混み具合を考えると溜息が出る。交通機関に関してはウィーンは天国である。


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